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グラーシーザ Grásiða

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北欧、ゲルマンの伝承、アイスランドのサガで、 「スールの子ギースリの物語」の物語にでてくる剣、槍。名前の意味は「灰色の脇」 Gráは灰色、siðaは脇、 英語ではgray-sideと訳される。剣名は通常男性形であるが、これは女性形なので 槍に鍛えなおされた時の名前と推測されている。

ギースリは、蒼白ビョルンという男が兄アリに妻をよこせと決闘(ホールムガンガ)して殺し、 その妻を奪った横暴に決闘をすることにした。

亡き兄の妻だったインギヴョルグは、ギースリに 自分の奴隷のコルルがグラーシーザという剣を持っていて、「剣を持っている者は 必ず勝利する」から貸してもらえばいい、と助言した。

ギースリはしぶるコルルから剣を借りて、ベルセルクの強者ビョルンを倒した。 インギヴョルグを妻に迎え、さらにビョルンの一族も皆殺しにした。
奴隷コルルは剣を返してくれと頼んだがギースリが金で解決しようとしたが応じず、 怒った奴隷はギースリを襲い、大怪我を負わせた。 ギースリはグラーシーザで奴隷コルルの頭蓋を割るほど強く打ったが、強打のあまり剣は折れ、 二人とも死んだ。

のちに世代を経て舞台をアイスランドに移し、そこで鼻(ネヴ)のソルグリームという鍛冶 に巧みなものが、ソルケルの持っていた折れたグラーシーザ を手槍に打ち直した。槍には飾りをほどこされ、握りは親指と中指を広げたほどだったという。
後にギースリの弟ヴェースティンがこの手槍で暗殺(モルズ)され、ギースリがこの手槍を抜き、 このグラーシーザの槍で仇を討つ。(ソルグリームを殺した)
余談だがソルグリームの兄ボルクルは鼻(ネヴ)のソルグリームに報酬(九歳の雄牛)を与え、 殺害者に呪い、魔術(セイズ)をかけさせた。
「ソルグリームを殺めた者に呪いあれ。その平安は永久に喪われ、何ぴとの助けにも、障りあるべし」

2つの記録にグラーシーザがでてくる。
1221年6月に島の有力な一族のひとりがグラーシーザの槍で殺され、これは昔ギースリが 用いたものだ、と伝わる話
1238年にグラーシーザの槍が闘いに用いられたという記録があり、槍は古めかしく 穂に波紋形の模様があったという


「魔女の神」という本(マーガレット・A・マレー著 西村稔:訳 人文書院 P86) では「ギースリの物語では<灰色の鋼>という剣はこびとが鍛えた ものであり、それゆえに その一撃を何に振りおろそうとも、すぱっと切ることができた。またその刃は 人間のつくった剣と違って魔力でなまくらにすることができなかった」という記述があるが、 「アイスランド サガ スールの子ギースリの物語」(大塚光子:訳 三省堂)ではそういう話は見つけられなかった。別の物語だろうか。 ギースリ伝説ともいえるスカルド詩もあり、他の伝承かもしれない。

 
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