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ユキ 雪 ゆき (英語 snow)

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世界各地、特に高緯度地域、高山などでみられる気象。 過飽和の雲で氷晶化した粒子が成長し雪となる。光を反射して白い色をしている。 高山以外では降雪は温帯ぐらいまでで、亜熱帯などでは通常雪は降らない。
氷点下程度まで寒くなり降水量がそれなりにある地域ならば雪が降ると考えてよいが、 豪雪地帯になるには、多量の水蒸気が発生する、運ばれる条件が必要になる。

雪に関しては、冬に関連した神話伝承となるだろうか。 怪物、怪異、魔物などの一覧は末尾に列記する。

また雪が降ることの起源、説明的伝承もみられる。
雪をもたらす神は、同時に寒さや冬をつかさどっていることが多い。
ヨーロッパ: 魔女の着物や羽から雪ができる
ドイツ: ホレばあさんが寝床を振るって羽を飛ばすと、それが雪になって人間界に落ちてくる
南サーミ人: 雪と氷の神「霜男」
チュクチ: 大地のへりに住む巨人たちがいる。
冷たい風を吹かせ、日がな一日、 クジラの骨でできたシャベルで 雪を掘り返しているという。
カナダ・イヌイット 天の神的な鳥の白い羽毛が降っているのが雪
アイヌ民族: 雪を降らせるのは冬をつかさどる女神 雪はウパupas
モンゴル: 風、雨、雪などをもたらすザダという石がある。
 山の中や動物の体の 中から見つかる石で、 これを水に浸すと、風や雨や雪をもたらすことができるという。
ロシア: 本当の冬 マロースじいさん
古代中国: 女神「青女」が雪や霜をもたらすと考えた
日本:天知迦流美豆比売

最も寒冷な地域としては北極、南極があるが伝統的に人が住んでいるのは北極圏であり、 最も氷雪の中での生活、北極圏での生活に特化しているのはイヌイット(旧称エスキモー)である。 土の大地がなく雪と氷しかない場所での生活、住居の構造物も氷を用いるイグルーなどの 伝統的な生活様式は極限の姿である。
(もちろん夏季に陸上でカリブー狩りなどしたり、現代では普通の住宅に住み子供は家で NINTENDOで遊ぶ、というイヌイットの生活もある)
L・シュナイデール氏の『フランス語=エスキモー語辞典』(カナダ・ケベック 1970)では 「雪」の項目に 20以上の名称があがっているという。北極圏外になる南西アラスカのユッピック語でも 少なくとも16種の名称が知られているという。 これらは語幹が別の名称であるという。 日本語でいえば「ぼた雪、粉雪…」等ではなく「みぞれ、あられ、雹」など別個の状態を個別 の名称で呼ぶものか。
以下、イヌイットの「雪」の語彙をあげる。

東エスキモー語(カナダ) ユッピック語(南西アラスカ) 意味
カニック qanik カヌック qanuk 降雪,雪片
アニウ aniu ? 溶かして水にする雪
アプット aput アンニオック aniuq(方言アプン apun) 積雪
プカック pukak ? きめ細かな雪
ペエヘトック piirtuq ペヘトゥック pirtuk 吹雪
アウヴェック auviq ウトファック utvak 切りだした雪塊
ほか
「やわらかな雪」(「沈む、めりこむ」の語根)
「地面すれすれに風で運ばれる雪」(「床」の語根)
の語がある。

参考:『西グリーンランド(エスキモー)語入門』 (久保義光:著)より
aput 雪(on the ground 積雪)
persoq 吹雪(雪嵐) (派生語?にperserpoq吹き流される[雪あらしで])
tiggúneq 塊 (積み重なった氷盤tiggunerit)
tingivoq 飛び上がる、風で運ばれる

なお、日本語の「雪(ゆき)」の語源は諸説ある。
1. 潔斎の意、斎潔(ゆきよし) ユは斎、キはキヨキ(潔白)の意[大言海]
2. ユキヨ(斎清)の義[名言通・和栞葉]
3. やすくきえるところから
4. 空寒く凍てて凝り雪となることから[名語記]
5. ユルヤカヒ(緩氷)の義
6. ユラユラと来て清いものであるところから[本朝辞源]
7. ヒユケ(冷気)の義[言元梯]
(日本国語大辞典より)

方言 ユギ、イギ、イキ、ウキ、エキ、ズキ、ヨギ等
雪に似た、みぞれ、あられ、ざらめ等は粒などの状態をあらわす語といえるだろうか。 食べ物など粒状のものにつかわれたりする。雹(ひょう)は漢語からだろうか。

日本雪氷学会によれば、積雪は4種類に分類され積もったばかりを「新雪」、自重で 圧密したものは「しまり雪」、 融解と再凍結を繰返した大粒の雪は「ざらめ雪」、温度勾配のもとで雪質の変化した雪は 「霜ざらめ雪」とよばれる、という。

雪に関しては、冬に関連した神話伝承となるだろうか。 妖怪の類は、自然の過酷な環境の中での怪異を想像したものであろうか、海などと似たものを感じる。 (「海には怪物がいる」という感じと同種で「雪山、雪の世界には怪物がいる」という感じに思える)
凍え死ぬのと隣あわせの世界としての伝承に思える。

エジプトや中東でも北極変動・偏西風蛇行の影響で雪が降ることがある。 2013年末には約100年ぶりの大雪が降った。 2016年初め、沖縄に観測史上初めて雪が降った。奄美も約110年ぶりの雪。
一説では極渦ポーラー・ボルテックスの寒気の閉じ込めが北極海の暖まりで変化しているとも。

雪の多い地域では、雪の中の移動用にスキーや橇(そり)などを発明した。 ソリは近代まで、最も早く走れる乗り物のひとつだった。 犬ぞりや、馬で引いたりした。
他にも雪を利用するのに、日本で冬に材木を運ぶのに雪の斜面を滑らせるなど利用したり、 かまくら等の雪室(ゆきむろ)など、雪のある地域ならではの文化がみられる。

以下、世界の神話伝承にみられる雪関連のもの
ビッグフット(雪男 世界)
イエティ(雪男 ヒマラヤ)
ミゲー(雪男 ブータン)
サスカッチ(雪男 カナダ北米先住民)
ウェンディゴ (イヌイットの寒気の精霊)
ジャック・フロスト (イングランド:凍えた天気の精霊)
雪女 (日本 妖怪)
雪の女王
雪の女神ポリアフ(ハワイ)

エリュシオン(古代ギリシャの理想郷 雪、 寒さを知らないという[2012年アテネ市内でも積雪があった])
ユカギール(ツングース語で「雪の人」。 ヴァドル民族の他称。)
ケルトの伝承には雪を降らすドラゴンがでてくる
参考資料
エスキモー―極北の文化誌 (岩波新書)
西グリーンランド(エスキモー)語入門―辞書並びに文法概観
日本国語大辞典 〔精選版〕 1
・日本大百科全書 (執筆者:関口直甫 小学館)

 

関連項目一覧
イヌイット[エスキモー] (文化地域)
イエティ (雪男ヒマラヤ)
ミゲー (雪男ブータン)
サスカッチ (雪男カナダ先住民)
ウェンディゴ (イヌイットの寒気の精霊)
雪女 (日本:妖怪)

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