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サンカ 山窩 さんか


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山家、山稼、散家などとも。日本の歴史上、と現在において独特の伝承・習俗をもつ集団。
家系は大事にするようだが大和民族・日本民族と別ではない。 全国的に分布するが、東北地方以北にはいないといわれる。
辞書によれば「定住せず、山奥や河原に天幕などを張って、自然人のような生活をする 漂白民。竹細工ブツなどをつくり、また狩りや漁などを営んだ」といった説明がなされる。
現代では定住という形で一般社会への溶け込みが激しく、その数を明確に 把握することはできないというが、1万余人とも数十万人ともいわれるらしい。
名称については様々なものがあるようだ。以下を参照。
(漢和辞典の「山窩」の項で漢籍の引用がなかったので日本独自の名称だろうと思われる)

農耕をしない、定住をしない、山間を生活の場として移動する人々だという。 サンカ(さんか)という名称の意味・由来に定説はないという。
「さんか」とよぶほかに、ポン、オゲ、ノアイ、セブリ、箕(み)作りなどともいう。 サンカがその仲間をよぶとき、関東ではナデシ、関西ではショケンシ、ケンシ、ケンタなどというようだ。

四国高松地方で「三界に家なき者」のことをサンカまたはサンガイというのと同じだとか (これでは仏教影響後の名称になってしまう)、 驚く説では、ロマ(ジプシー)の故郷といわれる西インドのサンガタの住民サンガニに語源を発するというものもある。

サンカの起源についても種々の説があり、さだかでないがサンカ自身の伝承では 出雲の国津神(くにつかみ)をその祖とする等いくつかあるという。
家系を誇り、先祖の功績を好んで述べたて、家筋に対する強い誇りをもっているという。

テントを持って漂泊するセブリと、一般社会に定住しているイツキとに分けられるが、 古くは定住せず、また、親分をもたず、だれからも支配や干渉をされない独立・自由の生活を好むといわれる。
組織的な部分は後述し、生活についていうと、 生業の主なものは竹細工で、箕作り、箕直し、ざる作り、ささら作り、 茶筅(ちゃせん)作り、茶杓作り、釜敷作り、気込め(櫃入れ)作り、矢こぎ・羅宇(らう)作り、簀子作り、 練子踏みなどを行い、近在の町や村に売り歩き、トフタベ(十二部)などといった。
ほかに、俵ころばし、小法師(こぼじ)、四つ竹、うずめ、さかき、てるつく、獅子、たまい、猿舞い、 猿女などの遊芸や、山守(やも)り、池番(いけす)、川番人(かもり)、田畑番人(のもり)、係船の番人(うきす) など番小屋にあたる仕事も行った。
また、竿屋(さおし)、鋳掛屋(ふいご)、研屋(するど)、羅宇屋(すいたけ)、 鋸目立(めあけ)、蝮捕(むしよけ)、呪い予言(とべない)洋傘直し(こうもり)、など 移動しながら生計をたてる仕事も行ったとされる。

こうして流れ歩く生活は、「一見原始的であるともいえる」というが、流浪の民、ロマなどにも見られる もので合理的というか必然的ともいえる。
また彼らとしては「農耕に従事しないことを誇りにさえしていた」という。

移動生活を行う「セブリさんか」は、1か所には数日、短ければ一夜で食器類を携えて次の場所に移動するため、 仮小屋とかテントを住まいとし、その住居セブリから、前述した移動生活のサンカを「セブリ」と呼ぶ。
テントは、山裾や河原などの水の便のよい所に南向きに張り、テントの中央には炉を切り、テンジン(天人) とよぶ自在鉤を下げ、テンジンとウメガイとよぶ短刀の使用は サンカの証とされた。

テント住まいのほか、洞穴を利用したり簡単な小屋掛けをするものもあった。 何を生業とするかによって住居の形態は違い、小屋もイヌノボリ、ボウロク、ヨホウなどとよぶものがある。 麦やうどんを主食とするとともに、川魚、小鳥、山菜とくに自然薯(じねんじょ)などを食べた。
地面を掘った穴の中に天幕を敷き、そこにためた水の中に焼けた石を投げ込んで湯をつくり入浴する方法や、 地面を焼いてその余熱で暖をとるなどの古い習俗も伝えている。また、出産前後の儀礼がほとんどなく、 血忌みに対する観念の希薄さも特色といえる。また多くの隠語を使い、それによって仲間との 連絡を密にすることができる。

全国のサンカを支配する組織の存在も伝えられていて、最高権力者であるアヤタチを 頂点としてミスカシ、ツキサキ(シ)などの中央支配者がおり、各地域にはクズシリ、クズコなどの支配者が 置かれ、そのもとに各地域セブリをムレコが統率したという。彼らは仲間相互の信義と義理とを 道徳の第一とするとともに、外部に対しては厳しい秘密主義をとっていた。

※倉石忠彦氏の執筆したものの参考文献
・イタカ及びサンカ (定本柳田国男集4 所収 1963 筑摩書房)
・サンカの社会 (三角寛:著 1965 朝日新聞社)
・サンカ研究 (田中勝也:著 1982 翠楊社)

参考資料
・世界大百科事典 (平凡社)[ 執筆者:倉石忠彦 ]
・日本大百科全書 (小学館)[ 執筆者:倉石忠彦 ]
・大辞泉 (JapanKnowledge)
・漢語林 (大修館書店)

 
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